どんな時に自賠責保険を利用するか
「自賠責保険の保険金は最低限の補償です」
弁護士が交渉に用いるのは裁判所の基準ですが、その裁判所の基準で算定した賠償金額に比べて、自賠責保険の基準で算定した保険金等の金額はとても低いものです。大きな差があります。よって当事務所は加害者が任意保険に加入していれば、自賠責保険の基準で交渉をすることはほとんどありません。自賠責保険に直接保険金を請求することもほとんどありません(後遺障害認定申請の被害者請求は除きます)。
しかし、交通事故において被害者に一定の過失があるという場合には、自賠責保険に直接保険金を請求した方が高い金額を獲得することができる場合があります。
「被害者に一定の過失がある場合、自賠責保険を利用した方がいいことがあります」
交通事故において被害者に一定の過失がある場合、過失相殺をします。総損害額から被害者の過失に相当する分の金額が控除されて支払われるのです。
しかし自賠責保険を利用した場合、被害者に70%以上の過失がある場合を除いて過失相殺されません。すなわち、自賠責保険の基準で算定した保険金が100万円であれば、被害者に20%の過失があっても100万円のまま受け取ることができるのです。具体的な例を以下に示します。
傷病:外傷性頸部症候群
総治療期間:90日(実通院日数:40日)
休業損害:なし
治療費:30万円
被害者の過失割合:30%
この時、裁判所基準では慰謝料を含めた総損害額が83万円、過失相殺をして被害者が受け取れる金額は58万1000円です(治療費込み)。
一方で自賠責保険の基準で算定すると保険金は66万6000円です。過失相殺はありませんので、自賠責保険に保険金の請求をしたら66万6000円全額受け取ることができます(治療費込み)。
自賠責保険を使うことは、その使い方によって、裁判所基準で算定するよりも高い金額を得る結果にもなり得るのです。
ちなみに自賠責保険については以下のような決まりがあります。
傷害にかかる保険金について、被害者の過失が70%以上の場合・・・本来の保険金から20%減額。
死亡、後遺障害にかかる保険金・・・被害者の過失が70%以上80%未満の場合は本来の保険金から20%減額、被害者の過失が80%以上90%未満の場合は30%減額、90%以上100%未満の場合は50%減額。
追突事故で追突した側が死傷した場合等、被害者の過失が100%の場合は、自賠責保険から保険金の支払いはありません。
「お気軽にご相談を」
自賠責保険基準や裁判所基準で保険金や賠償金の算定をするには、専門的な知識を必要になることもあります。判断が難しいという時には、自分自身に過失があるという場合であってもお気軽に当事務所へご相談ください。