保険会社との交渉で気をつけること
我々弁護士は、日頃から保険会社と話をすることが多くあります。その中で、保険会社の説明が誤っていると思うことがあります。その中から2つご紹介します。
1.「せっかく後遺障害の等級認定をしてあげたのに」
保険会社から提示された賠償金額に納得できないということでご来所された方の件で保険会社の担当者に連絡したところ、このように言われました。被害者の方はすでに後遺障害認定が済んでいて、右腕について4級、高次脳機能障害について9級、併合3級と認定されていました。しかし賠償金額はとても低い金額だったのでご相談にいらっしゃいました。医療記録を確認し、ご本人にもお話を伺ったところ、高次脳機能障害については9級ではなく7級が適切であり、併合2級と認定されるべきだと判断しました。
そこで当事務所は改めて後遺障害認定申請をすることにしたのです。保険会社に伝えると、「せっかく後遺障害の等級認定をしてあげたのに」と言われました。
後遺障害の等級認定には2種類あります。「加害者請求」は相手の保険会社に等級認定してもらう手続きです。事前認定と言ったり、一括対応と説明されたりもします。もう一つは「被害者請求」です。これは被害者や被害者側の専門家が証拠資料を収集し、後遺障害の等級認定手続きを行うものです。当事務所は後者の「被害者請求」を実施しています。この被害者請求に対応できる法律事務所は限られています。
被害者請求は手間のかかるものではありますが、加害者請求に比べると、適切な等級が認定される可能性が高くなります(必ず適切な等級に認定されるというわけではありませんが)。加害者請求を担った相手方保険会社の従業員が、後遺障害についての知識が豊富だとは限りません。よって「せっかく後遺障害の等級認定をしてあげたのに」という言葉は誤っています。
2.事故から5ヶ月ほどで後遺障害診断書の作成を案内する
事故後5ヶ月程で相手方保険会社から治療の終了について打診されることがあります。まだ痛みがあっても、「ここまで治らなかったなら後遺障害認定を受けられるかもしれません。後遺障害診断書を書いてもらってください」などと言ってきます。
しかし簡単に従ってはいけません。5ヶ月程度の治療期間では軽傷とみなされてしまうのか、後遺障害を認定してもらえないことがほとんどです。そして後遺障害診断書が作成された後では、その内容を変えることは困難です。後遺障害に認定される可能性がほとんどないのに、後遺障害認定の可能性を伝えて治療を終了させ、診断書作成の案内をすることは誤っていると思います。
このように、保険会社はあくまでも「相手方」であり、誤った説明が含まれていることもあります。保険会社からの説明に従う前に、法律事務所に相談されることをお勧めします。
特に治療が3ヶ月以上続いているという方は、保険会社とは慎重にやり取りされることをお勧めします。