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Ⅰ 法律事務所の破産

今回は、弁護士法人が破産した場合に、その弁護士法人に依頼をしていた依頼者はどのような点に注意すべきかについて解説します。

東京ミネルヴァ法律事務所が東京地方裁判所で破産開始決定を受けたとのニュースが報じられました。2020年6月24日付の日本経済新聞によると、弁護士法人の破産としては過去最大といわれています。

東京ミネルヴァ法律事務所に依頼をされていた皆様にとっては、まさに青天の霹靂です。
しかしながら、破産手続開始決定は委任契約の終了事由であるため、依頼者の皆様は今後の対応をする必要があります。すなわち、弁護士法人への委任契約が、受任者たる弁護士法人の破産開始決定で終了するため、相手方からの今後の連絡はすべて依頼者ご本人に来ることになります。そのため、今後についてまずは依頼者ご本人において対応をすることが必要になります。

下記では、交通事故やB型肝炎給付金請求事件を依頼されていた方が注意すべき点について解説します。

※東京ミネルヴァ法律事務所に依頼されていた方の契約関係に関する問合せについては、第一東京弁護士会が臨時窓口を設置しました。
詳しくはこちら(第一東京弁護士会のサイト)

※破産管財業務自体については、破産管財人が対応することになります。

Ⅱ 法律事務所が破産した場合の依頼者の注意点

交通事故事件を依頼していた法律事務所が破産した場合の注意点

1 保険会社による治療費の打切りがされるおそれがある

交通事故の被害に遭ったとき、治療中から弁護士に事件処理を委任することがあります。弁護士が治療段階から介入するメリットとしては、保険会社による治療費立替払いの一方的な打切りを防ぐことができる点が挙げられます。

交通事故の被害に遭って治療を受ける場合、その治療費は保険会社が立て替えて払うことが通常です。しかしながら、治療開始からある程度の期間が経過した段階で、保険会社はこの立替払いを止めることを通告してきます。このとき、既に弁護士に委任していれば、弁護士から保険会社に対して治療継続の必要性等を説明し、立替払いを継続させる交渉をすることができます。また、仮に治療費が打ち切られてしまった場合であっても、弁護士は、後遺障害申請や賠償金交渉を見据え、これまでに蓄積した知識と経験を踏まえて治療を継続するか否かについて検討することができます。

弁護士法人の破産によって弁護士法人との委任契約が終了した場合、弁護士法人としては保険会社の対応を行うことができなくなります。そうすると、治療の必要性を説明して治療費の立替払いの継続を求める交渉はじめ、保険会社とのやり取りを、怪我をしているご本人が行うことを余儀なくされます。その結果、交渉がうまくいかず、治療費の立替え払いを打ち切られてしまうことも考えられます。

※なお、治療費が打ち切られてしまった場合であっても、治療を継続すべき状況にある場合はあります。治療費が打ち切られたことのみをもって自己判断で治療を止めてしまうことは、決していい選択肢ではありません。

2 治療を継続するべきか、検査を受けるべきか等の相談ができなくなる

治療経過や検査結果とその記録は、後遺障害申請や賠償金交渉において重要な役割を果たします。知識と経験が豊富な弁護士であれば、後遺障害申請や賠償金交渉・訴訟を見据えて、治療段階からさまざまな助言ができます。例えば、どのような治療を受けるべきか、どのような検査を受けるべきかといった医療機関の受診に関する助言や、どの保険を利用すべきかについての助言もすることができます。

症状は時々刻々と変化し、保険を利用した治療は日々続いていくものです。医師は治療・医療の専門家ではありますが、後遺障害申請や訴訟・交渉の専門家ではありません。後遺障害申請や訴訟・交渉を見据えて、治療・検査・保険について、知識と経験豊富な弁護士から総合的にアドバイスを受けながら進めていくことは、適切な金額の賠償金獲得にとって不可欠です。委任契約の終了によって、相談できる弁護士がいなくなることは、交通事故被害者にとって大きなリスクといえます。

3 受け取れる賠償金額が少なくなるおそれがある

交通事故事件など損害賠償請求事件において、その事件処理を弁護士に委任するメリットは、賠償の対象となる損害額を決める際に、保険会社のいいなりにならずに済むということです。弁護士は多くの損害賠償請求事件を手掛けているため、賠償金額の算定の基礎となる損害額を算出する際に、これまでの経験を踏まえて交渉をすることができます。そのため、多くの場合、本人が交渉したときと比べて、弁護士が交渉をした方がより多くの賠償金を得られる結果となります。

弁護士法人の破産によって弁護士法人との委任契約が終了した場合、弁護士法人としては保険会社の対応を行うことができなくなります。そうすると、新たに弁護士と契約をしない限り、保険会社との交渉をご本人が行うことになります。百戦錬磨の保険会社の担当者を相手に、怪我をされているご本人が交渉をすることは困難です。弁護士法人との委任契約が終了したことを受けて、新たな弁護士と契約をすることなくご本人が交渉を行うという選択をすると、弁護士が交渉すれば獲得できていたはずの適切な金額の賠償金を受け取れなくなるおそれがあります。

4 賠償金の請求権が時効によって消滅してしまうおそれがある

交通事故の被害に遭った場合、賠償金を請求できる権利が発生します。しかしながら、権利は時間の経過によって消滅させられるリスクが常にあります。弁護士に委任してすべてを任せていたものの、その弁護士が保険会社に対して賠償金の支払いを請求することなく時間が経過してしまうと、賠償金の請求権そのものが時効によって消滅してしまうのです。交通事故賠償金の請求権の時効期間は短いので、注意が必要です。

B型肝炎給付金請求事件を依頼していた場合の注意点

1 請求には期限があります

B型肝炎給付金請求訴訟とは、集団予防接種等において注射器の使いまわしがされたことが原因でB型肝炎ウイルスに感染した方などが国に対して行った損害賠償請求の訴訟をいいます。その訴訟において国の過失を認める判決が出されました。

この判決を受けて、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が作られました。B型肝炎に感染しており、その原因が集団予防接種等における注射器の使いまわしであると認められれば、この特措法に基づき給付金と訴訟手当金を受け取ることができます。ただし、特措法は、2022年1月12日を請求の期限としています。請求を検討されている場合、この期限の前までに請求を行う必要があります。

2 請求するためには訴訟提起が必要です

特措法に基づきB型肝炎給付金を受給するためには、国を相手に訴訟を提起する必要があります。訴訟においては、事実の主張と証拠の提出が求められます。専門的な法的主張を行う必要があるほか、証拠として医療記録などの各種書類を提出する必要があります。症状に応じて必要書類は異なりますので、この準備をご本人が独力で行うことは困難が伴います。

Ⅲ 東京ミネルヴァ法律事務所に依頼をしていた依頼者の皆様の今後の対応について

以上のように、弁護士法人が破産したことによって、弁護士法人との委任契約が終了し、弁護士法人は事件処理を行うことができなくなります。この事態に至ったいま、依頼者の皆様としては、まずは現状を把握したうえで、新たな弁護士に依頼して適切なリーガルサービスを受ける体制確保を早急に行う必要があります。

東京ミネルヴァ法律事務所は全国に展開をしていた法律事務所であるため、第一東京弁護士会に相談窓口が設置されたのみならず、全国各地の弁護士会からその所属弁護士に対して、この件に関する相談及び受任の対応を求める通知がなされています。

弁護士法人グレイスでは、各分野に特化した弁護士が多数在籍し、幅広い分野の法律業務に対応しています。法的なお困りごとがある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。