2016.12.25 弁護士 永渕友也 ニュースレター36号掲載
交通事故に遭遇した時に支給されるお金は、加害者側の保険会社から支払われる治療費や慰謝料等の賠償金だけではないことがあります。労災保険や年金からも支払いがある場合があります。そのお金は加害者側の保険会社から支払われた賠償金とどの様に関係するのでしょうか。
損益相殺
被害者が交通事故に起因して利益を得た場合、その利益は原則として損害賠償額から控除されます。これを損益相殺といいます。
例えば被害者が自賠責保険からの賠償金を受け取っていた場合、この賠償金額は控除対象です。同じく健康保険から受け取った傷病手当金、遺族厚生年金、障害厚生年金、遺族基礎年金、障害基礎年金も損害賠償額から控除される対象となります。労災保険からの、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付についても、支給された金額を損害賠償額から控除します。
中には損益相殺の対象にならない利益もあります
以上の様に、原則として被害者が事故に起因した利益を受け取った場合には、その利益を損害賠償額から控除することになります。しかし中には損害賠償額から控除する必要のない利益もあるのです。搭乗者傷害保険については控除されません。同じく生命保険金も控除対象ではありません。また、その交通事故に労災保険の適用がある場合、労災保険から休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金、障害特別年金等の特別支給金の支払いがある場合があります。この各種特別支給金も損益相殺の対象ではありません。この様に例外もありますので注意しなければなりません。
損益相殺における控除はどの賠償項目から行うのか
ここからは専門的な話になります。損益相殺の対象となる利益がある場合、その金額をどの賠償項目から控除するのかという問題です。大きく分けて二つの問題があります。
一つは交通事故に遭遇した際の賠償金には事故当日から年5%の割合で遅延損害金が付きますが、この遅延損害金から控除されていくのかという問題です。もう一つは決まった費目に対して支給されるお金の場合、そのお金をどの損害項目から控除するかという問題です。
この問題の処理の仕方で、獲得できる賠償金は大幅に変わることがあります。特に賠償金が高額であったり、過失相殺があったりする場合には差が大きくなることが多いです。これらの問題はとても複雑であり、弁護士であっても交通事故の知識と経験が豊富な弁護士でなければ適切な対応ができない場合があります。
当事務所の弁護士にお任せください
交通事故に起因して傷病手当、年金、労災保険等を受給している方はぜひお気軽に当事務所にご相談ください。適切な賠償金の獲得に向けてサポートさせていただきます。